垂直型ソーラーシェアリングの導入事例 ~水田と牧草地での営農型太陽光の実践例~

営農型太陽光発電について相談を受ける中で、「水田でも本当にできるのか」「特に雪の多い地域では難しいのではないか」という声を聞くことがあります。
制度や資料を確認してみても、実際にどう設計され、どう使われているのかは、事例を見ないとイメージしにくい部分も多いと感じます。

今回は、当社が検討・設計・導入支援に関わった案件の中から、垂直型太陽光を活用した
石川県白山市の水田事例と、島根県邑南町の牧草地事例の2つをご紹介します。

いずれも当社が検討・設計・導入支援に関わった案件であり、地域条件に合わせて選択された垂直型という手法が共通点です。

営農型太陽光①水田での事例(石川県白山市)

北陸の積雪地域に位置する白山市では、水稲(酒米)を栽培する水田で垂直型ソーラーシェアリングが導入されました。
2024年4月には竣工式も行われ、実際の設備や営農状況を確認できる機会となりました。

設備概要(参考)

  • 所在地:石川県白山市
  • パネル容量:91kw
  • パワコン容量:79.6kW
  • 発電事業者:株式会社吉田酒造店
  • 栽培作物:水稲(酒米)
  • 発電方式:自家消費型(自社工場2拠点)
  • 設置方式:垂直型ソーラーシェアリング
  • 使用機器:Suichoku Solar株式会社製

※発電した電力は売電ではなく、自社の酒造工場で使用される自家消費型で運用されています。

営農型太陽光②牧草地での事例(島根県邑南町)

もう一つの事例は、中国・四国・九州地方で初となる垂直型ソーラーシェアリングとして、島根県邑南町で運用が始まったケースです。

この取り組みは、邑南町が環境省の脱炭素先行地域に選定されたプロジェクトの一環として進められたものです。

2024年10月より運用が開始され、現在も牧草地としての営農と並行して発電が行われています。

発電概要(参考)

  • 所在地:島根県邑智郡邑南町
  • 設置形態:営農型太陽光発電
  • 設置枚数:120枚
  • 発電容量:55.2kW
  • 年間想定発電量:31,129kWh
  • 作物:牧草

※この事例では、両面発電パネルを採用し、遮光と発電効率のバランスを取りながら設計を行っています。

ポイント①水田に垂直型太陽光を設置するという判断

これらの事例で特徴的なのは、太陽光パネルを一般的な南向きではなく、東西方向に垂直設置している点です。

一般的な太陽光発電では南向きにパネルが設置され、発電量は昼間をピークに下がっていく設計です。
一方で、当社が選択した垂直型パネルは、垂直に設置してパネルを東西方向に向ける設計です。朝と夕方に発電量のピークが現れやすく、発電量を分散させることができます。
工場の稼働時間や電力使用のタイミングによっては、この特性が使いやすく働くケースもあります。

当社では「発電量を増やすこと」だけを目的にするのではなく、営農環境・電力利用・地域条件を踏まえ、実際に使える発電設計になっているかを重視しています。

ポイント②積雪を前提にした構造

石川県白山市の事例では、パネルが垂直であるため、雪が積もって荷重になる心配はほとんどありません。
また、冬は雪面、夏は水を張った水田からの反射光を受けられる点も、この立地ならではの特徴です。

ポイント③営農作業との距離感

また、これらの事例の太陽光パネルは垂直型のため、上部を覆う構造がなく、農業機械の作業高を気にする必要がありません。
パネルは畝の間に沿うように配置されており、トラクターでの作業や水管理の動線を妨げにくい構成を取り入れました。

この事例から考えられること

営農型太陽光は、土地条件や作物、電力の使い方によって、最適な形が大きく変わります。

そのため当社では、一つの方式を当てはめるのではなく、地域の営農環境や事業計画を丁寧に整理したうえで設計方針を決めています。

今回ご紹介した2つの事例では、積雪がある環境や自家消費という電力の使い方、日々の営農作業とのバランスを踏まえた結果として、垂直型という選択がなされていました。

こうした実例を見ると、これまで難しいと思われていた条件の中でも、設計や考え方次第で成立する可能性があることが分かります。

今回ご紹介した取り組みも、営農と再生可能エネルギーの両立を検討する方にとって、現実的な選択肢を考えるための参考材料になれば幸いです。

当社は今後も、地域ごとの営農に寄り添った導入支援を続けていきます。