営農型太陽光の一時転用許可 申請ガイド|許可は3年か10年か、単収2割の基準まで

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)を始めるとき、多くの方が最初につまずくのが「農地の手続き」です。農地に支柱を立てて発電設備を置く場合、支柱の部分について農地法の一時転用許可を受ける必要があります。

この制度は2024年4月1日に大きく変わりました。それまで通知で運用されていた基準が農地法施行規則に格上げされ、あわせて農林水産省が「営農型太陽光発電に係る農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドライン」を制定しています。以前の情報のまま準備を進めると、書類が足りずに差し戻される可能性があります。

本記事では、申請の実務に絞って解説します。何年の許可がもらえるのか、どの書類を用意するのか、許可を取った後に何を提出し続けるのか、そして営農がうまくいかなかったときに何が起きるのか。すべて現行のガイドラインに沿って整理しました。

制度の背景や営農型太陽光そのものの仕組みについては、営農型太陽光発電と農地法の関係で解説しています。あわせてご覧ください。

制度が動いています(2026年8月時点)
本記事は現行制度の解説です。2026年7月から8月にかけて、農林水産省が営農型太陽光発電の新しい制度案について意見募集を行いました。基本方針の案には遮光率30%未満・最低地上高おおむね3m以上・年間50万円以上の生産販売実績といった新しい要件が示されており、施行は2026年9月末が見込まれています。単収をおおむね2割以上減らさないという基準は新制度案でも維持されています。申請前に、公布後の最新情報を必ずご確認ください。

一時転用許可とは何か

農地は原則として農業以外の用途に使えません。しかし営農型太陽光発電は、農業を続けながら発電も行う取り組みです。そこで、支柱が地面に接する部分だけを一時的に転用するという考え方で許可を出す仕組みになっています。

ガイドラインは営農型太陽光発電を次のように定義しています。

一時転用許可を受け、農地に簡易な構造でかつ容易に撤去できる支柱を立てて、上部空間に太陽光を電気に変換する設備を設置し、営農を継続しながら発電を行う事業

ここで重要なのは「簡易な構造でかつ容易に撤去できる」と「営農を継続しながら」の2点です。この2つが崩れると、後述する撤去指導の対象になります。

営農型太陽光発電の一時転用許可の流れ。事前相談、書類の準備、許可申請、設置と営農開始、毎年の報告の5ステップを示した図
一時転用許可の手続きは大きく5段階。許可が下りて終わりではなく、毎年の報告が続く点が特徴です。

許可期間は3年か10年か。ここで大きく差がつく

実務でいちばん影響するのは許可期間です。原則は3年以内ですが、一定の条件を満たすと10年以内になります。

一時転用許可の期間の区分表。担い手が営農する場合、遊休農地を再生利用する場合、第2種農地・第3種農地を使う場合は10年以内、それ以外は3年以内
10年以内となるのは3つの区分。いずれにも当てはまらない場合は3年以内です。

10年以内の許可を受けられるのは、次のいずれかに当てはまる場合です。

  1. 担い手が下部の農地で営農する場合。認定農業者、認定新規就農者、将来法人化して認定農業者になることが見込まれる集落営農などが該当します
  2. 遊休農地を再生利用する場合。遊休農地とそれ以外の農地を合わせて使う場合でも、遊休農地の面積が過半を占め、一段のまとまりがあれば含まれます
  3. 第2種農地または第3種農地を利用する場合

この3つのどれにも当てはまらなければ、許可は3年以内です。3年ごとに再申請の手間がかかるうえ、金融機関から見れば事業の継続性が3年しか保証されていないことになり、資金調達にも影響します。

認定農業者の資格を持つ方へ営農をお願いできないか、対象の農地が第2種農地に区分されていないか。この2点は、設計を始める前に必ず確認しておく価値があります。

申請時に必要な書類

通常の農地転用許可申請の書類に加えて、営農型太陽光発電では次の書類を添付します。

1. 設計図

発電設備と、その実施に必要な設備の設計図です。支柱の構造、パネルの高さ、列の間隔がわかるものを用意します。

2. 営農計画書

下部の農地で何を栽培し、収支がどうなる見込みかを記載します。ガイドラインに様式例が示されています。

3. 営農への影響の見込みと、その根拠となる書類

ここが最も準備に時間がかかります。設備を設置したことで下部の農地の営農にどれだけ影響が出るかを、根拠つきで示す必要があります。根拠として認められるのは次のいずれかです。

  • その市町村内における、栽培予定作物の生産量と品質に関するデータ(試験研究機関の調査結果など)
  • 必要な知見を有する者の意見書。普及指導員、試験研究機関、設備の製造業者などが該当します
  • その市町村内で先行して行われている栽培実績

なおその市町村で栽培されていない作物や生産に時間を要する作物を選ぶ場合は、書類が追加で必要になります。意見書に加えて、試験的に実施した栽培の実績または単収の根拠を含む栽培理由の書類を用意します。前例のない作物を選ぶほど準備の負担は重くなります。

4. 撤去費用を負担することを証する書面

設備を撤去するのに必要な費用を、設置者が負担することを示す書面です。あわせて許可基準では「撤去するのに必要な資力及び信用があると認められること」が求められます。FIT・FIPを活用する事業では、再エネ特措法に基づいて積み立ててきた撤去費用の金額も考慮されます。

5. 毎年報告することの誓約書

毎年、栽培実績書と収支報告書を許可権者に提出することを誓約する書面です。許可権者は都道府県知事、または農地法第4条第1項に規定する指定市町村の長です。

審査で見られる「単収おおむね2割」の基準

許可の可否を分ける最大の基準が単収です。ガイドラインは比較対象を同じ年産・その農地が所在する市町村区域内の平均的な単収と定めています。これと比べておおむね2割以上減少する場合は、営農の適切な継続が確実とは認められません。

この基準には、実務上おさえておくべき点が3つあります。

  • 比較対象は「同じ年産・同じ市町村の平均」です。自分の去年の収量ではありません。天候不順で地域全体の単収が落ちた年は、比較対象も一緒に下がります
  • 遊休農地を再生利用する場合はこの要件が適用されません。荒れていた農地を復活させる取り組みを妨げないための例外です
  • ただし再許可のときには適用されます。ガイドラインは、当初許可で遊休農地として2割要件を適用しなかった場合でも、再許可時には遊休農地ではなくなっているため当該要件が適用されると明記しています

3点目は見落とされやすいところです。遊休農地の再生で始めた事業は、許可期間が満了する時点で通常の基準に切り替わると考えて、営農体制を作っておく必要があります。

石川県白山市の水田に設置された垂直型の営農型太陽光発電設備。稲穂が実った状態でパネルが並んでいる
石川県白山市の稲作地に設置した垂直型ソーラー(2025年9月・収穫前)。単収への影響を抑える設計が、そのまま許可要件への適合につながります。

許可を取った後に続く義務

一時転用許可は「取って終わり」ではありません。毎年、栽培実績書と収支報告書を許可権者に提出します。申請時に誓約書を出しているとおりです。

また農業委員会は、農地パトロールなどの際に、設備が設置された農地の農作物の生育状況を定期的に確認します。営農の適切な継続が確保されていないと判断された場合、農業委員会は指導と助言をしたうえで、許可権者へ報告します。

なお、病気療養などやむを得ない事情がある場合は、その事情も考慮して指導が行われることになっています。単年の不作がただちに問題になるわけではなく、その事情と他の年の営農の状況を十分勘案して判断するとされています。

営農がうまくいかなかったとき、何が起きるか

ここは事前に知っておくべき部分です。ガイドラインは段階的な対応を定めています。

  1. 指導。営農の継続が確保されていないと判断されると、まず指導と助言が行われます
  2. 撤去の指導。営農が行われない場合、事業が廃止される場合、または指導にもかかわらず必要な改善措置が講じられない場合、許可権者は支柱を含む設備を撤去するよう指導します
  3. 勧告・処分・命令。撤去の指導に従わないときは、勧告や農地法第51条第1項の規定による処分または命令(原状回復命令など)が検討されます
  4. 情報の公表。命令が出され、履行期限までに正当な理由なく従わなかったときは、違反転用事案に関する情報の公表が検討されます

さらに、勧告等を行った場合は地方農政局長等へ報告され、FIT認定を所管する部局への情報提供も行われます。ガイドラインの様式には「FIT認定の取消年月日」を記録する欄が設けられています。営農が続かないことは、農地の問題にとどまらず売電事業そのものの継続に直結するということです。

2024年の制度改正の背景には、発電に重きを置いて営農をおろそかにし、下部の農地の利用に支障を生じさせる事例がありました。裏を返せば、営農を実際に続けられる設計にしておくことこそ、事業を守る最大の防御です。

申請を通しやすくする3つの実務ポイント

1. 遮光率の低い方式を選ぶ

単収を2割以上落とさないという基準に対して、最も効くのは設備の方式です。垂直型は地面への遮光率を1〜10%程度に抑えられるため、稲・大豆・そば・芋類のように光を必要とする作物とも両立しやすくなります。方式ごとの違いは垂直型ソーラーのメリット・デメリットで詳しく比較しています。

2. 作物は「その市町村で作られているもの」から選ぶ

前述のとおり、市町村内で栽培されていない作物を選ぶと追加の書類が必要になります。地域で一般的な作物を継続するほうが、根拠データや意見書を集めやすくなります。

3. 農業委員会に早い段階で相談する

申請の窓口は農業委員会です。運用の細かい部分は地域によって差があります。設計が固まってから相談するより、方式と作物の方向性が決まった段階で一度相談しておくほうが、手戻りが少なくなります。地方農政局等と都道府県にも相談窓口が設けられています。

設計だけでなく、施工まで自社で行っています

申請書類に添付する設計図は、実際に施工できる前提で作られていなければ意味がありません。支柱の高さや列の間隔は書類の上では自由に書けます。しかし、その地盤に本当に杭が打てるのか、その間隔で農機が回れるのかは現場を知らなければ判断できません。

splightは、垂直型の杭工事やパネルの設置工事を自社で手がけてきました。代表自身が現場で施工に携わってきた経験があり、全国に協力会社のネットワークがあります。そのため、次のような対応ができます。

  • 地盤に合った基礎の判断。杭が打てるか、打てない場合にどうするかを、現地を見て判断します
  • 営農動線から逆算した設計。使っている農機に合わせて列の間隔を決めます
  • 全国での対応。協力会社のネットワークにより、遠方の案件も施工体制を組めます

兵庫県丹波市、石川県白山市、福井県池田町などで垂直型が稼働中です。藤棚型の施工実績もあります。

まとめ

営農型太陽光発電の一時転用許可について、実務で押さえるべき点を整理します。

  • 許可期間は原則3年以内。担い手が営農する、遊休農地を再生利用する、第2種・第3種農地を使う、のいずれかなら10年以内
  • 審査の核心は単収。同じ年産・同じ市町村の平均と比べておおむね2割以上減らさないこと
  • 遊休農地の再生利用は2割要件の対象外だが、再許可のときには適用される
  • 許可後は毎年、栽培実績書と収支報告書を提出する
  • 営農が続かないと、指導 → 撤去指導 → 勧告・命令 → 公表と進み、FIT認定にも影響する

制度は2024年4月に変わり、2025年3月にも改正が入りました。さらに2026年9月末には新しい基準の施行が見込まれています。ネット上には旧制度の解説も多く残っているため、申請前には必ず最新のガイドラインと、地元の農業委員会の運用を確認してください。

あわせて2026年度のソーラーシェアリング補助金もご確認ください。設備の設計と補助金の要件、農地の許可要件は互いに影響します。

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)のご相談

農地転用の検討・パネル配置・遮光率の設計・営農型補助金の申請から施工まで、splightが全国対応で一貫サポートします。垂直型の杭工事・設置工事は自社で手がけており、全国の協力会社ネットワークで遠方の案件にも対応します。

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本記事は農林水産省「営農型太陽光発電に係る農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドライン」をもとに作成しています。

根拠は令和6年3月25日 5農振第2825号です(改正 令和7年3月31日 6農振第2983号)。

制度の運用は市町村により異なります。実際の申請にあたっては、地元の農業委員会および公式の最新資料をご確認ください。

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